棚田のメリット

 

1.生産の場としての機能

米を作る生産の場としての機能は、経済効率が低いとはいえ、棚田がもつ重要な役割です。一般に山田の米は美味しいといわれますが、棚田の米が美味しく上質米であることは科学的にも根拠があるます。それは、山間地にある棚田は、平坦地の水田に比べて昼夜の温度差が大きいためイネの登熟がよく、しかも出穂から登熟までに必要な積算温度(1,100~1,200℃)に達する日が平坦地よりも15日程度遅くなるので時間をかけてゆっくりと登熟し、充実させられるためです。


2.保水機能

大部分の棚田は、河川や溜池を水源とする灌漑施設をもっています。日本では、国土の70%を占める山地に降った雨は、自然のままだとすぐに海へ流れ込んでしまいますが、棚田はこのような水を等高線に沿う用水路「横向きの川」といわれる)に取り入れ、すぐに流出させず、迂回、滞留させる役割を果たしています。

 

3.洪水調整機能

大雨時には、棚田やその背後の山林に降った雨の一部は棚田に貯留され「小さな治水ダム」の役割りを果たします。仮に畦の高さを30㌢、普段の平均水深を3㌢とすると、全国の棚田の総面積は約221000㌶を掛けると、洪水調節容量は5.9億立方㍍となります。これは黒部ダムの有効貯水量1.5億立方㍍のほぼ4倍にあたる量です。

4.地すべり防止機能

地すべりは、厚い粘土層に覆われた山間傾斜地などで、雨水が地下に浸透して発生します。地すべり地帯に拓かれた棚田は、田起こしや代かきなどの作業によって耕盤と呼ばれる土層を作り、地下への浸透水を減らします。ところが、棚田が耕作放棄されると、耕盤が乾燥して亀裂が生じ、雪融けや大雨の時などに大量の水がこの亀裂から地下に浸透して、地すべりを誘発することがあります。

 

5.生物多様性・生態系保全機能

平地の大きな田んぼでは、コンクリート製の近代的な用水路と排水路が別々に作られていることが多く、水の流れは一方通行で、一旦排水路に流れ出た水は同じ田んぼに再び戻ることはありません。これに対して、棚田地域では、用水と排水を兼ねた水路や、土で作られた水路や畦畔が残っていて、生き物が成長に応じて田んぼと水路を行ったり来たりすることが可能です。また、溜池や湿田などの水たまりも多く、周囲の自然環境との補完性、水質の良さなどの理由から、多種多様な小動物、昆虫、植物が複雑な生態系を築き上げています。

 <参考文献>

  中島峰弘著、『日本の棚田―保全への取組み』、1999年、古今書院

 <参考ページ>

  棚田学会:http://www.tanadagakkai.com/