石津さんについて

~Profile~
石津大輔(いしづ・だいすけ)さん



1981年生まれ。滋賀県出身。
高校卒業後、大阪の服飾専門学校に進学。
24歳の時に地元滋賀に帰郷し、家族で運営する「針江のんきぃふぁーむ」で農業を始める。
就業3年目から、かねてから環境への負担を軽減するために実践していた、お米の無化学肥料無農業栽培・無化学肥料減農薬栽培を徹底。
食と農を明日につなぐ」をモットーに安心・安全な米作りを心がけている。
農作業以外にも、販路の開拓や講演活動などにも精力的に取り組んでおり、トークイベントやインタビューなどもこなしている。
座右の銘は「軸足は清流に、片足は濁流に
2009年11月、毎日新聞農業記録賞優秀賞を受賞

農業を始めたきっかけ

彼が農家になったのは、自然の成り行きだった。実家で農業を営むも、跡を継ぐつもりはなかった。高校を卒業後、大阪に移り服飾専門学校に入学した彼は、在学中たまたま縁があり、21歳で古着屋を始める。卒業後もそのまま店主として店を切り盛りしていたのだが、彼が24歳の時に彼の祖父が亡くなり、彼は初めて身近な存在の死を経験することになった。そして、初めて死を身近で感じたことによってとてもショックを受け、じゃあ自分はどう生きたいのか、ということを深く考えるようになった。その答えを求めに、青年海外協力隊に行こうと思い立つ。しかし、結局面接の直前に思い留まる。そのとき彼はこう思った。
「住む場所がなくても生きていける。服は一着あればいい。でも、食べることはお金を介さないとできない。もしかしたら、僕の答えは海外に行かなくても、生まれた時から側にある農業にあるんじゃないか」
自分なりの答えに気づいた彼は実家に戻って、農業をやりたいと父に頭を下げた。
元来読書好きで、哲学書から貪欲に知識を吸収していた彼の中に溢れていた形にならない思考が、身近な存在の死を期に勢いを増して一つの方向に押し流され、農業に行きついたのである。

試み
彼はこれまで、無農薬栽培への取り組みはもちろん、田んぼや山の神様への奉納など、かつて人間の生活の中に息づいていた農業の再生を試みている。この原点回帰の必要性を意識しはじめたのは、全くの素人だった彼が父の下で農業を始めてから3年目のことだった。初めは農業について何も知らなかった彼も、次第に現代農業の理想と現実の矛盾を感じ始めた。もちろん彼が父から培ってきた農業の知識は尊重するべきもので、そのままでも現状維持は可能かもしれなかったが、より向上させようという姿までは見えなかった。
もともと彼の家では無農薬栽培を行っていたが、規定以下ではあるものの、ある程度の除草剤は使用しなければならなかった。そのため、14haの田んぼのうち、11haは減農薬で残りの3haが無農薬だった。彼はその比率を、着手からわずか2年目で減農薬8ha、無農薬6haにし、現在では無農薬の比率が減農薬を上回るまでに至っている。
しかし、本来農薬、除草剤は作業の効率化を目的に開発されたものであり、これらを使用しないことによって、抑草の負担は増大し、害虫の大量発生に見舞われることもある。これらの問題をクリアできなければ、ただでさえ天候に左右される収穫の見込みはより不安定になる。言うまでもなく、彼の無茶な計画に、当初、家族も地域の農業指導員も、賛同する者はなかった。
しかし彼は周囲の反対を押し切ってこの試みを実行に移した。シーズン前は夜中の2~3時頃まで作業を続け、シーズンに入ると早朝の4時頃には起きて作業を開始していた。そして著名な無農薬農家を訪ね歩くなどの貪欲なまでの向上心とたゆまぬ努力の甲斐あって現在の無農薬栽培を実現し、結果的に収穫量も伸びた。誰もが無茶だと思っていた彼の試みは彼自身の手によって机上の空論ではなかったということが証明されたのである。
過剰な農薬の使用や農地の開発により、元あった生態系が崩れた地域は少なくない。人はすでにあるものの有難さに鈍感になりがちだ。それにより停滞した物事は、いずれ周囲から取り残されていく。しかし彼は、掘り起こした先人の知恵を、技術を乱用している部分に当てはめて、現代の技術とうまく併用していけば、現代に合った農業と自然の共存も難しくはないと考えている。そして先人の知恵も環境も、完全に失ってからでは遅い、という思いをもってこれからも自然との共存を目指した農業を営んでいくだろう。


僕たちの世代なら、ぎりぎり折り返せる。失ってきた農業の在り方を、少しずつ復活させていきたいんです

彼は祖父が亡くなるまで農家になるつもりなど全くなく、農家になる準備も心構えも当然していなかった。しかしその状態から農業に携わり、わずか三年で自分なりの意思や理想を持つようになり、さらには自分の力でその理想を形にしたのは偉業であり、そのための努力は並大抵のものではないと思われる。自分にとって未知の分野に挑む積極性や、その中で自分なりの考えを持つ思考力、またその考えの実現に向けて行動できる実行力を石津さんは兼ね備えており、我々も見習うべき美点であると私は思う。

石津さんのこれまでの活動

2006.10.04 NHKに取材を受ける
2007.06.21 NHKにて放送
2007.07.10 朝日放送に取材を受ける

2007.10.14 朝日放送にて放送
2009.07.21 滋賀県のガイドブック「滋賀のABC」に掲載される
2009.08.22 「ソラノネ」で開催される「いただきます。の向こう側」というイベントに講師として参加
2009.09.03 「Meets10月号」に掲載される
2009.12.19 「田園ドリームプロジェクト」のトークイベントに参加
2011          大豆レボリューションテイケイ畑として参加
2011.07.01 「びわ湖の日」30周年イベントに参加
2012.02.06 インターネット販売開始
2013.07.13 京都のイベントにパネラーとして参加
2013.07.16 雑誌「BURUTUS」8月1日号にお米を掲載される。
2015.06.24 「泉北タカシマヤ」1階催事場にて催された「第5回 近江味めぐり」に出展する
2015.06.27 BSフジ「夢の食卓」の再放送

参考文献
針江のんきぃふぁーむブログ『米と暮らす日々』[http://blog.nonkifarm.com/]
Meets10月号